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コラム「一滴」 2011年8月

岩波ホールで「遥かなるふるさと旅順・大連」を見た。大連で生まれ多感な少女時代を旅順で過ごした映画監督の羽田澄子氏が故郷を訪ね歩く様子を記録したものだ。重要な軍港である旅順は日中国交回復後も自由な行き来ができなかった。2009年に全面開放されたのを機に企画されたツアーに参加しての訪問である。


旅順も大連も中国東北部の遼東半島南端に位置する港町だ。日清・日露戦争から第2次世界大戦までいくつもの戦禍に遭い、長年にわたり日本やロシアの支配を受けてきた。中国人に下働きの労働をさせて支配していた日本人も敗戦後は進駐してきたロシア軍に家財道具もそのままに追い出されてしまう。


羽田氏は他国の人に支配され差別され続けた中国の人々の苦しみに思いをはせる。市内の戦跡を訪ねてこれまで知らなかった悲惨な事実も知り、戦争の罪深さや愚かさを思い知る。旅順と大連は今や活気あふれる中国の街になっており、羽田氏は懐かしい故郷が遠くなったことを感じるのであった。


激動する時代の中で自らの意思とは無関係に人生を翻弄される理不尽さに胸が痛む。戦争は自然災害ではなく人為的な犯罪である。防げるはずなのに油断していると愚かな歴史が繰り返されていく。不穏な動きには無関心でいられないと思った。




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