シリーズ 介護の現場から
第九回
最も基本的な生活支援である家事援助
介護保険からはずされる危惧が
東日本大震災で改めて感じたこと。それは日常生活を送る上で当たり前なことが、一番困難だったのではないかということです。朝起きてトイレに行き、顔を洗い、清潔な衣服に着替え、温かい食事を摂る。そのすべてがなんと貴重なことか。私たちヘルパーが訪問する利用者の方々にも同じことが言えます。高齢により、病気や障害で歩くことが困難であったり、長時間立っていられなかったり、掃除機をかけること、洗濯物を干すこと、硬い食材を切ることができなかったりします。ヘルパーは生きていく上で、もっとも基本的な生活動作(掃除・洗濯・調理・買い物など)の支援を行なっています。
介護保険が始まり10年。未だにヘルパーの行なう援助が家事手伝いの延長と見られ続けています。そして、介護保険から外される危惧が出てきています。
生活支援で変化が
ある事例を紹介します。81歳の一人暮らしの女性から相談があったのは、00年の6月でした。不眠・残尿感・体重減少など様々な体調不良により家事をすることができず、畳がすり切れるほど閉じこもり座りきりだったころです。週2回の訪問の際も身動きせずじっと一点を見つめている状態が続きました。部屋も足の踏み場がないほどちらかっており、パンや海苔巻きしか食べない等、偏食もみられました。ヘルパーも声をかけるにかけられず黙って作業だけして帰ることもありましたが、訪問を重ねるにしたがい、部屋が少しずつきれいになってきました。季節の変わり目や近所とのトラブルなどあると不定愁訴がみられましたが、当初のような閉じこもり状態はなく(ヘルパーと受診に行くなど)過ごせるようになりました。08年、季節の衣替えなどヘルパーと共に行なえるようになり「暖かい布団になった」と笑顔が見られるようになりました。09年、一緒に台所に立つようになり、ヘルパーと調理をしながら、とりとめの無い話を進んでするようになりました。寒い冬にはストーブを、暑い夏には扇風機をヘルパーの訪問時間にあわせてつけてくれました。10年、部屋の掃除機はヘルパーが掛けるが、マットを干したりテーブルの上を片付けたり、トイレ掃除ができるようになりました。買い物のリストをヘルパーに伝え、メニューを考え、里芋の煮物・魚の煮付け・カレー・肉じゃが・きんぴらごぼう・・・などをヘルパーに指示し作れるようになり、時には最後の味付けをしています。生活支援を継続する中で、真っ暗だった部屋に明かりが灯り、風が吹き、会話が聞こえてきたのです。(次回に続く)
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