下腹痛

 女性をおそう突然の下腹痛。下腹部にある内臓は、子宮、卵巣、腸管などです。産婦人科では、内科、外科と協力しながら、診断と治療を進めていきます。
 急激な下腹痛で手術が必要となる病気の第一は「子宮外妊娠」です。医師の間では「女性をみたら妊娠を疑え」という言葉もあるほどで、女性の下腹痛の診断でまず重要となるのは妊娠しているか否かです。ここ最近の生理が順調かどうかは、妊娠を診断する大切な情報ですが、子宮外妊娠でも少量の性器出血を起こすことがあるため、妊娠が疑われる場合は、妊娠検査薬を用いて診断します。妊娠検査薬で陽性であれば、まず妊娠と考えられますが、それにもかかわらず、超音波検査で子宮の中に妊娠している様子が見られない場合、さらに子宮や卵巣のまわりに出血しているような所見がみられる場合は、子宮外妊娠の疑いが非常に高くなります。
 妊娠に伴う下腹痛としては他に、流産と切迫流産があります。
 生理が少し遅れていて、下腹痛とともに、多量の性器出血をきたした場合、「流産」の疑いがあります。内診、超音波検査などで診断します。
 「切迫流産」は、流産の危険性が高い状態をいいます。超音波検査で、子宮の中に胎児がみられ、内診で子宮を押さえたときの痛みや、性器出血をみとめます。
 妊娠と関連しない急な下腹痛として多いのは、「卵巣腫瘍の茎捻転」です。卵巣は細い靱帯などでゆるく固定されていますので、腫れて直径五センチ以上になった場合に、ねじれてしまう(茎捻転)ことがあります。ねじれた先は血行が遮断され、壊死におちいってしまいます。手術治療が必要です。
 「卵巣出血」も、急な下腹痛をきたす病気です。これは、文字どおりお腹の中に卵巣から出血することですが、妊娠することができる年齢の女性で、生理の周期の後半に多く起こるといわれています。少量の出血であれば安静にして経過を見ますが、時として多量の出血をきたし、その場合には手術による治療が必要です。
 発熱や、おりものをともなう下腹痛として重要なのは「骨盤腹膜炎」です。骨盤腹膜炎の原因として最も多いのはクラミジアという病原体ですが、これは、性行為などで感染し、膣から子宮、卵管を通って、骨盤内に達し、炎症をおこします。痛みや発熱等の症状が非常に強い場合は、入院治療が必要となります。
その後、卵管の中や周囲に癒着をおこすことがあり、不妊や子宮外妊娠の原因となることがあります。

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