性感染症の話

 性行為にともなって感染する病気のことを「性感染症」といいます。現在流行している性感染症の特徴は、感染してからかなり長い間、無症状かあるいはごく軽い症状しかないことです。このため、感染した人が治療をうけずに放置されてしまいます。また初めて性体験する年齢が低下し東京の高校生へのアンケートでは高校3年生の約4割が性体験をしているという結果が出ています。しかも性感染症に対する正しい知識を得る機会がないため、若い人たちの間での感染が非常に増えてきています。性感染症はいわゆる「歓楽街」でもらう特殊な病気から、誰でも感染する可能性のある病気になりました。しかしながらその中にはエイズ、ウイルス性肝炎などのように生命に関わるもの、クラミジア感染症のように不妊症の原因となるもの、ヒトパピロマウイルス感染症(尖圭コンジローム)のように子宮癌の原因になるものなど非常に重要な病気ばかりです。この他に主なものをあげると、梅毒、淋菌感染症、性器ヘルペス、トリコモナス症などです。
 今回はこのうち、日本でも世界でも最も多い性感染症である、クラミジア感染症について詳しく述べます。病原体の正式名称はクラミジア・トラコマチス。女性では感染が子宮の入り口にとどまっていると、痛みもなく、黄色や、茶色のおりものがあるくらいです。生理痛や性交痛がひどくなることもあります。男性で尿道炎をおこすと、排尿時に痛みを感じることがあります。この時期には感染を知らずに他の人にうつしてしまうことがおこります。
 妊婦さんがクラミジアをもっていると、出産時に赤ちゃんに感染し、肺炎などを起こすため、当院では妊娠7〜8ヶ月の妊婦さん全員にクラミジアの検査を行なっています。グラフは、1994年から98年までの5年間に当院で出産した妊婦さんについて調べた結果から、年齢ごとの感染率を計算したものです。若い人ほど感染率が高く、全体の感染率は2.1%ですが、24才未満にかぎると7.3%と非常に高くなります。無症状の方への検査でこの結果ですから、その背景にはたくさんの感染者がいることが推測されます。
女性の場合、子宮頸管からさらに上って子宮卵管を経て骨盤内に達すると、卵管炎や骨盤腹膜炎、肝周囲炎などをおこします。こうなるとかなりの痛みや、発熱をともない、場合によっては入院と抗生剤の注射が必要になります。炎症を起こした結果、卵管が癒着して閉じたり狭くなったりするため、不妊症や子宮外妊娠の原因になります。
 症状の軽いうちに発見し治療すること、また性感染症なので、パートナーとともに治療することが重要です。抗生剤2錠を14日間内服が標準的な治療です。

 

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